FXは上か下かを50%の確率であてるものではない

FXの本質シリーズ ~ 今日は確率論のお話

 

9月に入ってから、毎週水曜日には

「FXの本質シリーズ」(このブログのカテゴリ名)をお届けしています。

今日は確率論や優位性のお話です。

 

言葉だけをみると難しく感じてしまいがちですが

コイントスやサイコロを例にわかりやすく説明していきますね。

 

FXとコイントスを比べてみる

 

コイントスであれば、裏か表が出る確率はそれぞれ50%だということは

想像がつくと思います。

ただ、厳密に言うと、コインの表と裏の形状が全く同じで

空気の流れなど様々な条件を同じにした状態で

コイントスを繰り返す必要があります。

 

「 そんなに細かいこと言わなくても・・・ 」

というお話かもしれませんが、

この点をきめ細かく追っていくことで

反対の極にある「優位性」あるいは「期待値プラス」に

たどり着くと、私は感じているので、

ちょっと我慢してお付き合いください。

 

 

コイントス以外でもう一つ、サイコロの目が出る確率を見てみましょう。

サイコロは6面なので、それぞれの面が出る確率は

すべて均等で1/6だと思いますよね。

 

ところが、こちらも厳密に言うと

1/6ではないそうです。

 

「どの目も同じ確率で出る唯一のサイコロ」として

高等学校の数学の教科書で取り上げられたサイコロがあります。

 

「 えっ? 

どの目も同じ確率で出る唯一のサイコロということは、

普通のサイコロはどの目も同じ確率で出ないの?」

 

と、びっくりしてしまいますよね。

 

 

このサイコロ、埼玉県の入曽精密株式会社がつくったものです。

こちらの日経クロステックの記事から引用させていただきます。

 

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実は普通のサイコロはそれぞれの目が出る確率は1/6ではありません。
わずかな確率の違いではありますが、最も出やすい目は実は「5」なのです。

「5」の裏側が「2」だからです。
「5」の目ではくぼみを5カ所掘っているのに対し、「2」の目では2カ所しか掘っていません。
従って重量がアンバランスになり、目の出方に偏りが生じます。
このアンバランスさは「1」(他の数字よりも目のくぼみが大きく深い)と「6」、「3」と「4」の組み合わせよりも大きくなるため、「5」の出る確率が最も高くなるのです。

これに対し入曽精密の完全重心のサイコロは、
3D-CADでデザインし、立方体を6つの四角錘に分割して考えた場合、
6つの底面に彫られる目の形状を調整して、
それぞれ四角錘の重量が均等になるようにしてあるのです。
また、転がるサイコロが止まる瞬間、
面形状の違い(質量配分)により目の出る確率に影響が出るときがあります。
全てのサイコロの目の削り量が、
見えにくいほど最小にしてある理由がそこにあります
(例えば、2の目の削り深さは0.006mm、6の目は0.002mm)。

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一般的には均等の確率だと考えられているコイントスやサイコロでさえ

厳密に言うと条件がそろわないと確率は均一になりません。

 

それでは、FXはどうなのか?

という本題です。

 

FXもエントリーしたレートから、その後上昇するか、下落するか。

この2つのどちらかにしかベットすることはできません。

選択肢は2つです。

 

だからといってその2つのそれぞれの確率が50%にはなりません。

もうおわかりですよね。

 

コイントスやサイコロより圧倒的に条件がばらばらだからです。

FX取引を行っている市場には

様々な人達が参加しています。

 

誰がいつ、どれくらいのボリュームで

どちらの方向にエントリーするか、

あるいはどのポジションをいつ決済するのか、

これは誰にもわかりません。

 

誰にもわからない条件が複雑に絡み合っている相場の世界。

どう考えても上か下か、イーブンにはなりませんよね。

 

 

マーク・ダグラスはポーラ・T・ウエッブとの共著である

『ゾーン 最終章』でこのように書いています。

 

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多くのトレーダー、特に経験が浅い人は、
値動きは上か下かの二方向しかあり得ないから、
個々のトレードで勝てる確率も基本的にコイン投げと同じ
50対50だと誤解している。

コイン投げで表か裏が出る確率が50対50なのは、
コインの重さが「均一」だからだ。

ところが、価格は取引所に入ってくる
「不均一な」数量の売買注文によって動く。

そのため、価格は上か下にしか動かないが、
小口の買い注文を出した数分後に、
ヘッジファンドのマネージャーが
非常に大量の売り注文を出したら、
そのトレードで利益が出る確率はゼロに近いだろう。

つまり、価格が上か下にしか動かないという事実は、
個々の予測がどれくらいの確率で当たるかとは何の関係もない。

価格が上げるか下げるかの確率は、
直後に入る注文数に応じて決まる。

私たちはだれが、どんな数の買い注文か売り注文を
出すつもりなのか知るよしもない。

したがって、一連の予測内での個々の予測で勝てる確率は、
どんな場合でも常に未知の変数であり、
それは一連のトレードに対して計算される平均の勝率とは
何の関係もない。

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相場で生き残るための優位性の見つけ方

 

先ほど紹介したマーク・ダグラスの一節、

「一連の予測内での個々の予測で勝てる確率は、
どんな場合でも常に未知の変数であり、
それは一連のトレードに対して計算される平均の勝率とは
何の関係もない。」

この言葉は重いですよね。

 

では、僕らは優位性を見つけて期待値をプラスに持っていくことは

不可能なのでしょうか?

 

いいえ。

そんなことはありません。

 

サイコロの話を思い出してください。

なぜ、サイコロの目が出る確率が均等ではないのか?

 

その理由は、それぞれの面で目の数を掘ることで

削り取った質量の違いによる重心のズレでした。

 

その重心のズレは、サイコロそのものが持っている特徴で

これはサイコロを振るという毎回の施行に影響を与えるため

「5」の目が最も出やすい、という優位性を生み出しています。

 

 

では、相場はどうでしょう?

相場には、サイコロのようにすべてのチャートに

常に同じ優位性が働く、といった現象が起きることはありません。

 

ただ、相場は人の思いが集まって形作られています。

その思いは人それぞれで、すべての相場参加者の思いを知ることは不可能です。

 

ただ、多くの相場参加者に共通する思いがあります。

例えば、意識されやすい水平線。

キリ番と言われるダブルゼロ、トリプルゼロのレート。

押し目や戻り目。

他にも、フィボナッチやピボットなどなど。。。

 

これらの基本的なことは多くの相場参加者が意識しています。

その思いがチャート上に現れても不思議ではありません。

 

これで「相場で生き残るための優位性の見つけ方」の

答えが見えてきましたね。

 

 

難しいことは何も必要ない。

多くの相場参加者が意識していることに乗っかればいい。

 

これだけです。

 

 

確率論の前に考える必要がある還元率と控除率

 

これまで、勝つ確率、負ける確率、という話をしてきました。

最後にもう一つ、大切なことをお伝えします。

 

FXに取り組むには、実は勝負の確率を考えて利益を出すことよりも

確実にマイナスに計上される取引コストのことも考えなければなりません。

 

控除率、あるいは還元率という言葉を聞いたことがあるかと思います。

ギャンブルや宝くじではよく使われますよね。

 

JRA(日本中央競馬会)では還元率のことを払戻率と呼んでいます。

JRAの「馬券のルール」のページには下記のように記載があります。

 

 

単勝、複勝では払戻率は80%です。

もし、単勝馬券を10万円購入したとしたら、

買った瞬間、その10万円の元本は8万円になる、と言ってもいいかもしれません。

 

この払戻率(還元率)が高いほうが参加者には有利ですよね。

では、FXの取引コストはどれくらいでしょうか?

 

これは、証券会社や口座種別によって変わってきます。

日本の証券会社のFX取引口座では、ほとんどの口座が手数料がゼロ円で

スプレッドも非常に小さいので取引コストは数%でしかない、と思われます。

(計算の仕方や元本の考え方によって変わってきます)

 

そうすると、還元率は90数%で非常に良いですよね。

(場合によっては98%以上にもなります)

還元率80%の競馬単勝馬券を買うよりも、

FXにベットするほうが取引コストだけを見れば

元本が戻ってくる確率は高くなります。

 

ただ、FXも参加するだけで確実に取引コストがかかる、

ということは忘れないでくださいね。

 

もし、スプレッドが1pipのドル円を10ロット(100万通貨)購入したとしたら、

その瞬間、-1万円からのスタートです。

(手数料無料の口座の場合)

 

ティックが動く前に即、決済すれば、-1万円で終了です。

 

つまり、参加するだけだったら

期待値は取引コスト分マイナスだということになります。

 

 

マイナスベースの世界で取引をしている、ということを忘れないで

しっかりと優位性のあるロジックを構築していきましょう。